笛吹市教育委員会と連携し、市内小中学校の校務における生成 AI 活用支援を開始しました。ディスカバリーズがこれまで企業の現場で培ってきた生成 AI 活用支援の知見を、新たに教育の現場へと広げ、先生の時間を、子どもと向き合う時間に変えていく取り組みです。

ディスカバリーズは、山梨県笛吹市教育委員会と連携し、市内の小中学校における教職員の校務での生成 AI(Microsoft 365 Copilot Chat)活用を支援する取り組みを実施しました。生成 AI(Microsoft 365 Copilot Chat)とは、Microsoft 365 の中で対話形式により文章作成や要約、情報整理などを支援する生成 AI アシスタントです。

主要指標

19校
対象校数(小学校14校・中学校5校)
38名
支援した ICT リーダー
97.3%
生成 AI 利用経験(教職員)
月300回超
管理職の平均プロンプト提出数(校長)

ご支援の背景と課題

ディスカバリーズは「働くすべての人たちがイノベーションをもたらす世界を創る」をビジョンに掲げており、この「働くすべての人たち」には、日々子どもたちと向き合う教職員も含まれます。教育現場における生成 AI 活用には、主に以下の3つの課題があると捉えています。

  • 課題①:校務負担が「子どもと向き合う時間」を圧迫している 学級通信や保護者連絡、会議記録、指導案づくりといった校務が教職員の大きな負担となり、本来もっとも大切にしたい「子どもと向き合う時間」を圧迫しています。
  • 課題②:不安と指針の不在が、最初の一歩をためらわせている 生成 AI はこうした校務を支える有力な手段となり得る一方、現場には「使い方が分からない」「使ってよいのか判断できない」といった不安があります。活用を後押しする明確な指針(ガイドライン)の整備も、多くの現場で道半ばです。
  • 課題③:管理職の姿勢が、現場の活用を左右している 現場での活用は、管理職の理解や姿勢に大きく左右されます。多くの管理職は生成 AI を否定しているわけではなく、「何かあったときの責任」や「正しい知識を持つ機会の不足」から、慎重にならざるを得ないのが実情です。

これらは特定の地域に限らず、全国の教育現場、さらには民間企業にも共通する課題です。ディスカバリーズはこれまで数多くの組織で生成 AI の活用・定着を支援してきました。その経験から見えていたのは、現場の意欲だけでは活用は広がらず、管理職の後押しがあって初めて組織に根づくということです。この構造は教育現場でも変わりません。

一方、教育には企業と決定的に異なる点があります。企業活用の多くが「効率化」を目的とするのに対し、先生方の仕事には、児童・生徒のためにあえて時間や手間をかけてでも大切にしたい業務があります。生成 AI に任せるべきなのは、先生にしかできないこの部分ではありません。アンケートの集計、お便りの文面の調整、条件に基づくクラス分けや班分けといった、必要だが教職員の時間を奪っている作業を AI が支えることで、生まれた時間を先生が本当に注ぎたいことへ振り向けられます。私たちはこの違いを起点に支援を設計し、現場の意欲を組織の力に変えるために、管理職への働きかけを支援の柱の一つに据えました。

笛吹市教育委員会は、こうした課題に早くから向き合い、各校に ICT リーダーを配置するなど、現場主導で活用を広げる独自の体制を整えてきました。今回の取り組みは、この土台の上に、ディスカバリーズが民間の現場で培ってきた活用支援の知見を生かすものです。

取り組みの概要

ディスカバリーズは笛吹市教育委員会と連携し、市内19校(小学校14校・中学校5校)の ICT リーダー計38名を中心に支援を行いました。4月から現場の状況把握を進め、5月19日から6月19日までの約1か月間を「集中利用期間」と位置づけて、以下のステップで教職員の校務での生成 AI 活用を支援しました。

① 現状調査とヒアリング

各校の代表である ICT リーダーを対象とした利用状況アンケート(回答38名)を実施し、あわせて校長・教員へのヒアリングを行いました。推測ではなくデータと現場の声の両面から実態を捉えることで、その後の打ち手を的確に設計する土台としました。

調査からは、活用の素地がすでに育っていることが分かりました。プライベートで生成 AI を使った経験のある先生は9割(97.3%)にのぼり、校務でも「ほぼ毎日」「週に数回」使う積極利用層が過半数(65.4%)を占めていました。一方で、校務利用では「回答の正確性への不安」に次いで「管理職の考えが気になる」が上位に挙がり、心理的な安心感の醸成が鍵であることも見えてきました。

さらに、全職員を対象とした実際の利用状況を分析したところ、校務での利用が最も活発だったのは校長をはじめとする管理職層であり、平均プロンプト提出数は校長で月300回を超えていました。ICT リーダーが「管理職の考えが気になる」と感じている一方で、実態としてはその管理職こそが日常的に生成 AI を使いこなしているという、認識と実態のギャップが見えてきたのです。

教職員を対象とした生成 AI 利用状況アンケートの分析結果
利用状況アンケートの分析結果

② 教職員向け体験型 Copilot 研修

5月26日、体験型研修「Copilot はじめの一歩 〜まずは触ってみよう!体験型研修〜」を現地・オンライン併用のハイブリッド形式で実施し、計70名(現地14名・オンライン最大56名)の教職員が参加しました。生成 AI の仕組みや得意・不得意、注意点を短時間で押さえたうえで、大半の時間を、教職員が日常的に行っている校務をそのまま題材にしたハンズオンに充てました。「明日から自分の校務に生かせる」という具体的な手応えを持ち帰っていただくことを目指しました。

ハンズオンの題材例

  • Copilot Chat で調べてまとめる
  • 授業1回分の指導計画を作成する
  • 学級通信の下書きを作成する
  • Forms で集めた委員会の希望調査を Excel にダウンロードして活用する
  • Forms で集めたアンケートを Excel にまとめ、Word でレポートを作成する
教職員向け体験型 Copilot 研修で使用したスライド
体験型研修で使用した研修スライド

③ Copilot フォローアップ相談会

研修後の5月28日から6月18日にかけて、週次のフォローアップ相談会(計4回)をオンラインで開催しました。試す中で出てきた迷いや疑問を、気軽に持ち寄って一緒に解消できる場として設け、現場が実際に手を動かす期間に寄り添い続けました。

④ 管理職向け研修

管理職を対象とした「生成 AI のよくある誤解と正しい理解」を骨子とした研修を実施しました。狙いは、管理職の役割を、活用の可否を「判断する人」から、現場の挑戦を「後押しする人」へと転換することです。代表的な誤解を、正しい理解へ置き換えました。

  • 「AI に任せると、自分で考えなくなる」 AI は考えを深めるツール。最後に思いを込めて伝えるのは人の役割です。
  • 「出力が正確じゃないから心配」 最終的に判断するのは人。確認体制のもとで使うことが大前提です。
  • 「自分が使えないから、推進できない」 管理職が使いこなす必要はありません。「使っていい」と後押しするだけでよいのです。
  • 「何かあったとき、責任が取れない」 管理職の役割は、組織として安全に使われる仕組みを整えることです。

⑤ ユースケースの集約と横展開

集中利用期間の前後でアンケートを実施し、理解度・行動・成果・認識変化の4観点で実施前後を比較しました。「集中利用期間中に1人1ユースケース」を合言葉に、教職員が校務の中で実際に試した活用事例を収集しています。うまくいった事例だけでなく、思うようにいかなかった工夫も含めて拾い上げ、学校の枠を越えて共有できる形に整理しています。なお、今回の成果を踏まえ、8月上旬には全教職員を対象とした研修の実施を予定しています。

今後の展望

ディスカバリーズは引き続き、教職員が安心して生成 AI を試し、自分の業務で使いこなせる状態づくりを支援してまいります。最初のきっかけづくりを担いながらも、最終的には現場が自分たちの力で活用を進められる状態を目指します。笛吹市での実践で得た知見を他地域の教育現場へも広げ、教職員が子どもと向き合う時間を増やせるように、現場に寄り添った支援を続けてまいります。

笛吹市教育委員会様のエンドースメント

笛吹市教育委員会 学校教育課 統括情報通信技術支援員 土田 純 氏

本市では、令和4年度から各校に校務や授業での ICT 環境の活用を推進する「ICT リーダー」を置き、以前から現場での生成 AI 活用を広げる取り組みを進めてきました。今回、外部の専門的な知見が加わったことで、教職員の活用が前進し、管理職を含めた学校全体に前向きな変化が広がっています。 市内全校への展開が一巡し、ここからは本格的な活用に向けた段階に入ります。私たちがめざすのは、生成 AI によって余剰時間を創出し、それぞれの先生方が本当にやりたかったことへの時間や、子どもと向き合う時間を増やせるようにすることです。 各学校が自律的に活用を進められるよう、教育委員会として引き続き環境を整え、現場をしっかりと支えてまいります。

土田 純 氏
笛吹市教育委員会 学校教育課 統括情報通信技術支援員

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